畳の段差と運動用段差
畳の縁(へり)につまづく老人を見たことがありますか。
では、廊下と畳の部屋の敷居(高さ3cm程)につまづく老人は見たことがありますか。
「え、そんな人いるの。」と思う方も多いと思います。でも、本当に実在します。それは、私の祖母です。
老人になると足を上げているつもりになって、実は上がっていないということがあるようです。
祖母は必ず柱などにつかまってから、畳の部屋に入って来ていました。そこまで慎重な祖母なのですが、柱につかまっていながら、なお、つまづいていました。更に畳の縁にもつまづいていました。これにはビックリです。
老人は家の中ばかりにいると足を上げるという必要性がなくなります。しかも、完全なバリアーフリーになっていると家の中に段差がないことになります。
そうなると、足を上げて移動する必要性がなくなり、自然と足が上がり難くなってしまいます。バリアーフリーという「安全」にばかり、目がいってしまっている弊害ですね。
私は「運動用の段差」を設けることも必要ではないかと思います。年をとれば、とるほど家の中にいることが多くなります。家の中を歩くだけで運動になるような家を造ることによって、健康も維持できるのではないでしょうか。
老人に一番危険なのは上記のような小さな段差です。あるような、ないような段差には手すりなんて付けませんよね。これが大きな事故の元になります。
もしかしたら、「敷居につまづいて骨折」なんてこともありえます。
段差を設けるのであれば最低15cmはあった方が良いと思います。
15cmあると必ず目に入ります。段差を意識できるので気を付けることができるのです。そして、そこには手すりを設けましょう。または、将来、手すりが取り付けられるように、下地の準備をしておきましょう。
段差を設ける場所はいくつか考えられます。玄関が一つですね。
あまり、高い段差だと昇り降りに危険ですが、土間部分にはすのこを敷くなどして、裸足で降りれる場所を作り、框との高さが15cm程度になるのが良いのではないでしょうか。
土間部分には椅子を置くと靴を履いたり脱いだりすることが、とても楽に行えます。そして、框付近には手すりをとり付ける事もお忘れなく!
その他にはフローリングのリビングの一角に造った和室の床を上げるとか。
トイレをスリッパの高さだけ上げるとか。スキップフロアーにして、リビングからキッチンに行くには階段を上がらなければならないようにするなど、いろいろと考えられます。
「危険」とか「安全」ということを考慮した家を建てたいですが、過剰に、危険をさけたり、安全を重視してしまうと、子供が危険に対する注意力を身につけられなかったり、老人の動きが必要最小限になってしまって運動能力が低下したりします。
段差に「危険」を感じるのは、段差を認識できなかたり、段差を安全に昇り降りできる手すりや滑り止めなどの配慮がないためです。
「安全」に対する配慮をして、段差と仲良く健康に安全に暮らせる工夫をしましょう。
なお、家の中に段差(高低差)を設けることで、空間的な変化を作り出すことができます。変化のある空間、天井の高さの違う空間は一つの家の中に居ながら、違う雰囲気を感じられる楽しい家になると思います。
●これから家を新築される方へ
必要以上のバリアーフリーは「危険察知能力」の低下を招きます。適度な段差などを設けて、家の中にも脳を刺激する工夫を安全に配慮しながら考えましょう。
◇道先 案内人(みちさき あんないと)のお勧めは手すりを付けられるように下地を壁の中に入れておくことです。将来、ここには手すりが必要だなと思われるところは工事業者に頼んで下地を入れてもらいましょう。
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